2011年08月15日

未来世代への責任 放射能と子どもたち

8月13日(土)午後2時~4時まで西原町図書館主催の「放射能と子どもたち」 京都大学原子炉実験所 小出裕章氏の講演があった。会場には、700名を越える人が集まり、その中で赤ちゃんを抱いた母親の姿や、若い女性の姿が目立った。

未来世代への責任 放射能と子どもたち

沖縄と放射能

小出裕章氏は講演の冒頭にレイモンド・チャンドラーの遺作『プレーバック』の言葉を引用して講演がはじまった。「強くなければ生きられない。優しくなれなければ生きる価値がない」と。7年前の今日(8月13日)沖縄国際大学の構内に米軍のヘリコプターが墜落した。その墜落現場には、沖縄の警察官や消防団の姿はなく、米軍に沖縄国際大学は占領されていた。その現場にガイガーカウンターを持った作業員が放射能レベルの観測をし、その後、防護服に身を固めた飛散防止処置をする為の隊員が処置にあたっていた。その後、墜落機はもちろんだが、土にいたるまで米軍は持ち去った。ガイガーカウンターを持った作業員や防護服に身お固めた処置班は何を探し、何を探していたのか、それは、放射線物質がストロンチウム90で一般の人が年摂取限界の550人分のストロンチウムが墜落事故によって行方不明になったからだ。

生き物の不思議
私たち一人ひとりの命のはじまりは万能細胞と呼ばれるたった一つの細胞です。それが細胞分裂を繰り返し、大人になった時には60兆個の細胞となり、それぞれの細胞が固有の役割だけを分担するようになります。遺伝情報を正確に伝えていくことが、生き物の不思議の核心です。DNAの2重螺旋の構造、らせんがほどけながらまったく同じ2本の複製をつくりだす。遺伝情報が書き込まれたDNAの2重らせんになっているDNA分子の幅は2ナノメートルであり、長さは合計で約1,8メートルです。それを太さ0,2mm(裁縫に使う糸)にした場合長さはどれほどになるか、この会場の西原町から180Kmで沖永良部と徳之島の間ぐらいの距離になる。2本からなる細い糸がこの距離をこんがらずにほどけ、そして同じ糸を複製する。これがDNAだ。

放射線とはなにか

放射線の発見と人間自身の手によって被曝の始まりという解説の中で、レントゲン、ピエル&マリー・キューリーと放射線を発見した人々の歴史をたどり、被曝による急性死確率の表とその解説をした。全身被曝線量(グレイ)によって2グレイによって死ぬ人が出始める被曝量、4グレイによって半致死線量、8グレイでほぼ100%死ぬ被曝量と説明した。「臨界事故」が起きた茨城県東海村の核燃料加工工場(JCO)で事故にあった2人の被曝量が何と大内さん18グレイ、篠原さんが10グレイであった。8グレイで100%死ぬ被曝量である。事故にあった直後の右手の写真が映し出され、1ヶ月後の大内さんの右手が映し出された。それまで、会場は子どもの声や母親のあやす声などで少々騒がしかったのだが、一瞬、会場が静寂に包まれた。被曝単位グレイの説明と、国際的な学会での報告BEIR-VIIの報告(2005年)の中から「利用できる生物学的、生物物理学的なデータを総合的に検討した結果、委員会は以下の結論に達した。被曝のリスクは低線量にいたるまで直線的に存在し続け、しきい値はない。」と結論をした。つまり、生き物と放射線は相いれないと。

放射能と日本

広島・長崎の原爆、そして、その被害、被爆前の広島の町並み、そして、この世の地獄と化した広島の風景。東京大空襲の際の1685トン
広島原爆16キロトン、長崎原爆21キロトン、東京大空襲の何と広島は10倍の破壊力によって破壊尽くされた。そして、戦後原子力の平和利用ということで1955年12月31日の東京新聞の記事が紹介された。そこには、原子力発電の夢が語られた。しかし、現実には原子力にかけた幻の夢であった。

原子力発電の仕組みとその後に残る厖大に生み出される放射能の汚染物質、広島に投下されたウランの重量が800グラム(生成した核分裂生成の重量)片手に上げた500ミリリットルのペットボトルをわずかに上回る重量であり、毎年100万キロワットの原子力発電所の1基が1年運転するごとに燃やすウランの重量は1トンである。その厖大なウランを燃やし、しかも、その処理方法もまだ人間は発明することもないままに原子力発電がおこなわれている。

原子力推進派が取った対策…原発は都会につくらないことにした。
1.原子炉の周囲は、原子炉からある距離の範囲内に非居住区域であること。
2.原子炉からある距離の範囲内であって、非居住区域の外側の地帯は、低人口地帯であること。
3.原子炉敷地は、人口密集地帯からある距離だけ離れていること。
を決めた。東京電力は自分の給電範囲から原発を追い出した。原子力発電所は東北電力管内にあり、火力発電所は都会に立地している。
そのような法律を作って原子力発電所をつくった。何故1~3が必要だったか、それは、ウランを燃料として使う極めって危険な原子力発電所であるからだ。

福島原発事故 今なお、進行中
事故を起こした福島原発の模様を画像で紹介。防毒マスクを付けた畜産家が牛に餌をやっている姿や、餌を与えられずに死んだ牛などの画像が続く、福島第一原発から約10㎞北西の双葉町の一角には、「原子力正しく理解で豊なくらし」という看板がある。その下を取り残された犬が歩いている。あまりにも皮肉な看板だ。町をさまよう牛の群れ。そして、チェルノブイリ事故の避難基準を適用すれば、琵琶湖の2倍の面積になる。日本の法令を厳密に適用すれば、福島県全域に匹敵する地域を破棄しなければならないとの事実が告げられる。

どちらを選択するか。
被曝による健康被害。避難による生活の崩壊。
ついに起きてしまった福島原発事故。本当の被害の大きさは?
◆失われた土地
◆強いられる被曝
◆崩壊する一次産業
◆崩壊する生活
倒産するのは東京電力だけではない。日本国が倒産してもあがないきれない被害を出してしまった。

放射線ガン死の年齢依存性
1万人・Sv当たりのがん死亡率(白血病を除く)
30歳の人に比べ0歳児の放射線ガン死は4倍に達する。つまり、赤ちゃんや子どもを放射線から守らなければならない。
1ミリシーベルトの被曝をした人が1万人集まった場合のガン死者
原発推進派  全年齢平均 1人 0歳児 4人
Gofman 全年齢平均 4人 0歳児 16人(Gofman米国の学者)
日本人が被曝しても良いとされる被曝線量は、現在20倍に引き上げられた。

優しいということ
強い者に付き従うことではない。自分以上に、生きることに困難を抱えている生き物に対して、どんな眼差しを向けることができるか?と最後に小出裕章氏は語り、講演は終了した。その後、質疑応答があり、東京、横浜、埼玉と大都市近郊から避難をしてきたお母さん方からの質問が多くあった。

未来世代への責任 放射能と子どもたち


講演後、主催者から贈られた花束を持って、沖縄の守り神シーサーと反原子力の守り神の小出裕章氏とツーショット

この講演の模様は、OCNにて収録、放送される。また、下記のユーストリームにてご覧になれます。
放射能と子どもたち



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Posted by 高橋進 at 19:21│Comments(0)脱原発
 
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