2015年02月28日

<金口木舌>「ワイルド」な沖縄とは


<金口木舌>「ワイルド」な沖縄とは
ジャズの巨匠ルイ・アームストロングの「ホワット・ア・ワンダフル・ワールド」は「この素晴らしき世界」の邦題で知られる。もし「ワンダフル」を「ワイルド」に入れ替えれば、どう訳せばよいか
▼20日に亡くなった画家、真喜志勉さんの告別式でこの問いに接した。参列者に配った会葬品の包装を広げると、そこにはオスプレイの機影と「ホワット・ア・ワイルド・ワールド・オキナワ」の英文があった
▼沖縄の前衛芸術を牽引(けんいん)した画家の旅立ちを、家族や教え子が演出した。包装に用いたのは昨年の個展を飾った作品のコピーである。英文の訳を試みた。「なんてひどい沖縄よ」というせりふが浮かんだ
▼ジャズとお酒を愛した。15年前、コザの飲み屋でジャズの演奏に合わせて愉快に踊る姿に大笑いした。風刺画の過激な表現に肝を冷やした。新聞小説の挿絵は美しく、心が和んだ
▼亡くなる前の数日、家族と自宅で過ごした。寝床で深夜、「沖縄は矛盾に満ちている」「沖縄の現実を何とかしてくれ」と口走ることがあったという。辺野古を覆う無法と「ワイルド」の文字が重なる。画家の慧眼(けいがん)はあの逮捕劇を見抜いていたか
▼泡盛の薄い水割りを味わい、ジャズを楽しんだ最期の日々も沖縄を愛し、深く憂えた。あの作品を壁に貼っておこう。矛盾のただ中を生きる県民へ残した真喜志さんの言葉を忘れまい。




同じカテゴリー(訃報)の記事
至宝首里城炎上
至宝首里城炎上(2019-10-31 12:03)


Posted by 高橋進 at 14:59│Comments(0)訃報
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。